〔 2017年11月号(2017年11月12日発行)・詩「秋」 〕

碧い風 目次



  
 秋

 坂をのぼると
 坂の上にいる人たちが
 不思議そうな顔をして
 私に言うのだ
 「あなたは坂の下に立っていたはずだ」      
 と

 坂をおりると
 坂の下にいる人たちが
 不思議そうな顔をして
 私に言うのだ
 「あなたは坂の上に立っていたはずだ」
 と

 ああ なんということだろう

 空の
 どこまでも深くすんだ
 人の
 空を見て
 立ち止まりやすい日

 私もまた立ち止まって
 空を見上げ
 空につられて
 深い呼吸を繰り返していただけなのに





 いつのまにか
 私は
 樹木の気配をただよわせていたらしい       


               (久野雅幸)

  
  
 
  
  

〔イラスト:梅津 大暉(たいき) さん 高校2年〕


〔作者からひとこと〕
 この詩は、現実の世界から現実とは異なる世界へ、足を一歩踏み入れたところで成り立っています。その世界が読者の皆さんにとっても、「そこで呼吸してみたい」と思っていただけるような世界であったならば、幸いです。

〔作者からもうひとこと〕
 詩集には、未収録の詩です。
 梅津さんのイラストは、この詩についても、やはり非常に大胆な構図で、詩の雰囲気をよく表現してくれています。