〔 2018年3月号(2018年3月11日発行)・詩「三月には」 〕

碧い風 目次



  
 三月には

 雪が屋根をすべり落ちた
 すべりの悪い戸を開けるような音をたてて

 こうして
 開かれる―
 春の入り口

    *

 風が吹いて
 枝が揺れている
 まるで
 見えない小鳥たちが
 枝の上をあちこち飛び回っているかのように       

    *

 旅立ちの準備をしなければならない 
 わかっている
 どんなに準備をしても
 なお必要なものがあること
 鳥は鳥で
 人は人で

                  (久野雅幸)
  
  
 
  
  

〔イラスト:東海林 風夏(ふうか) さん 高校2年〕


〔作者からひとこと〕
雪の多い冬には、春の訪れを待ち望む気持ちがいっそう強くなるようです。春の訪れを実感する一方で、新しい年度を迎えるための準備をしなければならない。三月は、そういう月であると思います。

〔作者からもうひとこと〕
 詩集未収録の詩です。「碧い風」が初出の場となりました。
 イラストは、人に翼を付すことで、鳥のイメージを重ね、「旅立ち」の時を表現してくれました。