〔 2018年7月号(2018年7月8日発行)・詩「七月」 〕

碧い風 目次



    
  
 七月

 やっぱり
 あの
 入道雲のせいなのだろうか

 いつのまにか
 遠近法が
 おかしくなってしまったのは           

 さっき取り逃がした蝶々が
 ああ ごらん
 雲の
 あんな高いところに
 止まっている

    *

 傘をさして
 あなたは
 湧き上がる雲を見上げていた

 まるで
 伸び上がった
 雲の先から
 冷たいしずくが
 たえまなく降りかかってくる
 とでもいうように

               (久野雅幸)
 
  
  

〔イラスト:T. Y. さん 高校2年〕


〔作者からひとこと〕
入道雲や暑さなど、真夏には、人を幻惑する要素があるように思います。詩を読んで、“どこかに幻惑感をともなう夏らしさ”を感じとってもらえたならば、幸いです。一方、夏の日に対する思いや印象は人それぞれ。イラストは、詩の世界をとてもさわやかな印象でとらえ、表現してくれました。

〔作者からもうひとこと〕
 詩集未収録の詩です。この詩も、現実の世界から少しだけ外に踏み出したイメージによって成り立っている詩です。イメージを思い浮かべ、感性によって味わっていただければ、と思います。