〔 2018年8月号(2018年8月12日発行)・詩「開く」 〕

碧い風 目次



    
  
 開く

 日差しのはげしい一日だった

 ―開いているのがせいいっぱいです
 だれもが言った

 開いていることでつとめを果たせるものたちを     
 うらやましい気持ちで
 ながめていた

 駐車場わきの
 金網に
 からまって 咲いている
 昼顔の花


      (久野雅幸 詩集『帽子の時間』所収)
 
  
  

〔イラスト:小池 柚(ゆう)さん 高校1年〕


〔作者からひとこと〕
 「開く」だけで「つとめを果たせる」のは、生きるのに「動く」ことを選ばなかった植物の特権と思います。猛暑の日は、「動く」のがつらくて、「開いているのがせいいっぱい」と言ってみたい気持ちにもなるのではないでしょうか。
 イラストは、女の子がアイスキャンディーを口にしながら昼顔の花を見ている場面に、情景を転換してくれました。

〔作者からもうひとこと〕
 「開く」は、もちろん、「ひらく」と読みます。「あく」ではありません。
 「開いているだけでせいいっぱい」と言いたくなるような猛暑の夏にならないことを願います。