〔 2018年12月号(2018年12月9日発行)・詩「十二月の空」 〕

碧い風 目次



    
  
 十二月の空

 すっかり葉を落とした木々

 枝の向こうに
 これまでは見えなかった風景が
 見える

 建物
 木
 そして
 空

 これまでよりもたくさんの空と
 ぼくたちは
 向き合うように
 なって

 低い雲に覆われた空は
 まるで
 頭上で
 窓が閉じられ
 カーテンがとざされているようだ              

 (ここから見える
  建物の窓と
  同じく)

 その下で


 ぼくたちは
 ときに
 無辺の寂寥に耐えながら
 目的地へと
 歩みを進めなければならない
 けれども

 雲の向こうに
 青空がのぞくと
 ああ そこには
 窓わくに手を置きながら
 顔をのぞかせて
 こちらに向かい
 身を乗り出して
 ほほえむひとがあるようだ

 うつむかない 明るく澄んだ 気持ちのほかには      
 どんな理由もいらないほほえみ!


                    (久野雅幸)
 
  
  

〔イラスト:滝沢 愛優(あゆ)さん 高校1年〕


〔作者からひとこと〕
 十二月は、空が美しい時節。冬の星空はよく話題になりますが、冬の青空にも他の季節にはない美しさがあると思います。
 イラストは、時間を夜として、十二月の街を一人歩くときに感じるような寂寥と美しさを表現してくれました。

〔作者からもうひとこと〕
 詩集未収録の詩です。「碧い風」が初出です。ここに掲載するにあたって、「サンデータイムス」紙掲載時のものを一部書きかえました。