旧トップページ・2014年2月〈2014年1月30日~2月26日〉








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   目的


  目的ではないのだ

  冬になると
  木はすっかり葉を落とし
  そのことによって
  木の下に生きるものたちに
  あたたかな日ざしを与えるけれども               
  目的ではないのだ
  日ざしを与えることは
  木が
  葉を落とすことの

  目的ではないのだ
  
  夏になると
  木はいっぱいに葉をしげらせ
  そのことによって
  木の下に生きるものたちに
  すずしい日かげを与えるけれども
  目的ではないのだ
  日かげを与えることは
  木が
  葉をしげらせることの







  目的ではないからといって
  そのことを見なくてもいい
  ということにはならない
  目的ではないからといって
  そのことを考えなくてもいい
  ということにはならない
  それらは
  それぞれ
  ひとつのはたらきなのだ
  光を与えることは
  冬に木が葉を落とすことの
  日かげを与えることは
  夏に木が葉をしげらせることの
  木のことを語ろうとするときには
  見落としてならない
  はたらきなのだ

  あなたのするひとつひとつのふるまいが
  はたらきとして世界を作りあげている
  空腹をいやそうとして
  スーパーマーケットで一個のパンを買ったこと          
  公園に行ってベンチにすわり
  下りてきたハトに
  何げなく
  




  パンを与えたこと
  あなたのする
  そうした
  ひとつひとつのふるまいが
  世界を作り
  たしかに
  世界を動かしている

  そうして
  あなたがそこにいることで
  それだけで
  あなたが
  あなたの身の回りにいる何人かの人々を             
  幸せにしているとしたら
  
  そういうことも
  見落としてはいけないことなのだ
  だれかが
  (あなた自身をも含めて)
  あなたのことを語ろうとするときには
  この世界における
  それは
  かけがえのない
  あなたのはたらきとして







  たとえ
  あなたが
  あなたの生きる目的を見つけられずに
  自分自身をまったく大切なものに思えなくなってしまっている   
  そういうことがあったとしても                


                        (久野雅幸) 


〔写真の説明〕
  写真は、エンゴサクの花。天童市内に、以前はスキー場のゲレンデとして使われ、現在は山中の草地となっている場所があります。小高い山の斜面を、木を伐採して、ゲレンデにしていたもので、スキー場とは言っても、ゲレンデは、その一斜面のみ、機械で人を運び上げるような設備は、もともとありません。生育条件が適しているのか、早春の時期(と言っても、山形県では、四月に入ってからのようですが)に訪れると、アズマイチゲやカタクリ、エンゴサク等の花がたくさん咲いています。初めて見たとき、驚いて不思議に思ったのは、エンゴサク(という名前もそのときは知りませんでしたが)の花が、実にさまざまな色をして咲いていることでした。このような狭い場所で、なぜこのように異なる色の花が咲いているのか、たいへん不思議でした。「メンデルの実験場」という言葉が、自然と思い浮かびました。