旧トップページ・2014年8月〈2014年8月3日~8月31日〉





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  並木道


 並木道で
 立ち止まっていては
 いけない
 暑くて
 歩くのに疲れたからといって
 並木道の一本の木の影の中で
 立ち止まっていては
 いけない
 そんなことをしていると
 あなたは声をかけられることになる
 
 ―どうぞ、お入りください。

 振り向くと
 そこには
 たとえば
 右手に捕虫網を持ち
 左手に虫かごを持った
 麦藁帽子の少年がひとり立っている

 入るというのはいったいどこからどこに入るのか        
 などと考えていては
 いけない
 そんなことをしていると
 あなたはまた声をかけられることになる

 ―どうぞ、ご遠慮なく、お入りください。



  この間いらっしゃった方も、まだ、中でお休みです。
  長い間、旅をしていらっしゃった方らしく、
  ずいぶんとおもしろいお話を、たくさん聞かせてくださいます。
  さあ、あなたも、どうぞ、中に入って、ごゆっくり、
  おくつろぎください。  

 つられて
 一歩を踏み出しては
 いけない
 入り口はあっても出口がないということが
 どんなにありふれたことかということは
 たとえば
 私たちが生れたこの世界のどこに
 出口を見つけることができるかという
 その一事を考えてみてもわかること

 何も聞かず何も見ていないふりをして
 (何しろそれは
  実際に何も聞かず何も見ていなかったとしたところで
  少しもおかしなことではないのだから)
 つかの間休んだことのあかしに
 ほうっとひとつ息をつき
 影の外へと
 自然に一歩を踏み出すならば

 あなたは
 あなたの頭上で蝉がやかましく鳴いているのを聞き
 ときには



 一匹のアゲハチョウが
 あなたのわきをすうってかすめて飛んでいくのを見たりして          
 また
 歩き出すことができるのです
 あなたの
 暑い町の中を
 にじみ出た額の汗を
 さっそく
 手でぬぐったりして                            

                     (久野雅幸)

 

〔上の写真の説明〕
 天童市梨ノ木(国道13号線沿い)の「ひまわり迷路」で撮りました。
 8月3日に撮りましたが、花の時期を終えたひまわりも少なからずあり、エノコログサ(ネコジャラシ)が丈高く伸びて穂をつけ、早くも秋の風情が感じられました。
 もっとも、猛烈な暑さと、強い太陽の光は、夏の盛りを感じさせるものでしたが…。