旧トップページ・2014年10月〈2014年10月5日~11月2日〉



 


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 夕方に


 夕方には
 花を閉じてしまう

 タンポポ
 カタバミ
 アキノノゲシ

 夕方になるころ
 花を咲かせる

 キスゲ
 ユウガオ
 マツヨイグサ

 一日という時間を
 使いきろうとはしないこと
 一日という時間において
 貪欲に従う時間をためらいなく区切ること         
   
 昼に咲く花の実の中には
 昼の時間が 記憶のように
 刻みこまれているのだろうか
 夜に咲く花の実の中には
 夜の時間が 記憶のように
 刻み込まれているだろうか





 たとえば
 月あかりの記憶が
 マツヨイグサの実の中に
 ひそかに入りこんでいるというようなことが       
 はたしてあるだろか

   *

 空き地で遅くまで過ごし
 夕飯の支度を終えた母に名前を呼ばれて帰る    
 そんな過ごし方をしていた
 あの頃のように
 家へ帰っていく道が
 いまは
 どうしても
 見つからない

 *―(ダッシュ)は、本来二文字分の長さ。
                   
                  (久野雅幸)



         

〔写真の説明〕
 いちばん上の写真、向かって左はヤマトシジミ、右はカタバミ。カタバミは、決してめずらしくない植物ですが、ヤマトシジミにとっては、唯一産卵の対象となり、幼虫の食草となる植物です。その強い結びつきは、不思議で、感動的です。
  すぐ上の写真は、アキノノゲシ。野草にはめずらしいクリーム色の花が印象的です。

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