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 街道

 かつては街道と呼ばれた道が
 いまは裏道となって
 大きな県道に横切られ
 そこから
 小道となり
 ほどなく
 国道にぶつかり
 途絶えている

 街道であったときの道の名前が          
 町に住む者の間で呼ばれなくなり
 ついに
 道沿いに住む者の間でも
 呼ばれなくなってしまったならば            
 その道が持っていた
 本来の意味は
 新しい地図の中に
 すっかり
 埋もれてしまうのだろう

 若松街道と呼ばれる道と
 山口街道と呼ばれる道が




 私の住む家の近くで
 交叉している

 若松街道と呼ばれる道は
 東に行けば
 やがて山道となって
 若松観音若松寺に至る
 山口街道と呼ばれる道は
 かつて
 久野本(くのもと)村で
 羽州街道から北東に分岐し
 久野本村を抜けたところで                
 関山街道に合わさり
 東に行って
 山口村に至る―
 そういう道だったのだろう
 
 どちらも
 いまとなっては細い道で
 新しく切られた国道や県道のわきで
 裏道となっており
 新しく道が切られるたび
 さらに




 裏道となっていく

 若松街道は
 若松寺から
 西へくだると
 道沿いにいくつもの寺社が点在し
 羽州街道にぶつかる
 わずか手前で
 山口街道と交差している

 夕方 
 若松街道と山口街道との交差点に立って         
 西に向かうと
 道の向こうへ
 まっすぐに
 日の沈むのを
 見ることがある 

 もしかしたら
 若松街道は
 若松寺から
 はるか
 西方(さいほう)をのぞむ




 祈りの道だったのでは
 ないだろうか

 新しい地図の下に
 道は簡単に埋もれてしまうが             
 埋もれた道のわきから
 萌え出た
 ヒガンバナのように
 埋もれきらない
 もの
 を思う

 手首の上に
 ヒガンバナでも咲いていなければ           
 あの夕日を
 手のひらに
 受けとめることはできない
 けれども

 はじめから遠くあるものと
 いっしょに
 私たち
 一日をすごしているのだ             

                     
                            
  *「若松観音若松寺」…「わかまつかんのんじゃくしょうじ」とルビ
                             
                   (久野雅幸)