旧トップページ・2014年12月〈2014年12月1日~12月31日〉



 10月8日皆既月蝕   11月5日ミラクルムーン


   トップページプロフィール書いた詩など読んだ詩など詩のことなど掲示板
   リンク集ポストポストポスト
  



   月
      ―天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎ隠る見ゆ 
                           柿本人麻呂  


  ねぇ
  月の下に立つ人よ
  耳を澄ませば
  船を漕ぐものたちの唄が
  あなたの耳に
  聞こえてくるのでは
  ありませんか
  あなたの中には
  月のめぐりと
  潮の満ち干が
  隠れているのだから

  月の下に立つ人よ
  月を見上げれば
  わたしたちは
  まるで
  かつて船に置いていかれた
  罪ある人のようですね

  ―罪の由来が何であったか
  物語の中では
  語られないまま





  愛を失えば生きることの意味をも失ってしまう       
  それが
  この地で生きるものの変わらない姿であると
  そのことだけを
  語り継ぎ
  言い継ぎながら

  月の下に立つ人よ
  あわてることなく
  じっとおとずれを待つことを
  わたしたちに教えたのは
  太陽ではなく
  きっと
  月だったのではないでしょうか
  (太陽はむしろわたしたちをせきたてているようで)    
          
  月の?を捨てたとき
  わたしたちは
  待つことによって
  組み立てられる時間を
  なくしはじめたのでは
  ないでしょうか






  月の下に立つ人よ
  今夜もまた
  わたしたちは月を
  見送ることになるのですね
  わたしたちを
  この地に残して
  去って行く
  一艘の船を見送るように                 



                      (久野雅幸)
    *「天の海」に、「あめ(のうみ)」とルビ。  
    *「―」(ダッシュ)は、本来2字分。
  


〈「月」に寄せて〉
  今年、2014年は、月が話題になることの多い年でした。満月と月の地球への最接近が重なる「スーパームーン」が1年のうちに3回あり(7月12日、8月11日、9月9日)、10月8日(旧暦9月15日、満月)には皆既月蝕が見られ、11月5日には、旧暦の9月と10月の間に「(うるう)9月」が入ったため、「閏9月13日の夜の月」すなわち「その年2回目の“十三夜の月”」を見ることができ、それが171年ぶりのことであったため「ミラクルムーン」と騒がれました。
  上の写真の、向かって左が10月8日の皆既月蝕の月(19時52分撮影)。そして、右が、11月5日の「その年2回目の“十三夜の月”」すなわち「のちの十三夜の月」です(21時22分撮影)。