旧トップページ・2016年1月〈2016年1月1日~2月14日〉



   
  
 

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  通り道

  もしかしたら       
  鳥には
  それぞれ
  お気に入りの木が
  あるのではないだろうか
  
  そうして
  木によって
  日々の通り道が
  ある程度
  できあがっている
  ということが
  あるのではないだろうか

     *

  わが家の庭にある大きなドウダンツツジの木        
  大きいと言っても
  隣家のウメの木や
  以前庭にあったモミジの木に比べれば
  高さのない
  その木にも
  この冬




  何羽もの小鳥が
  訪れた

  スズメ ホオジロ ジョウビタキ

  ジョウビタキの姿を
  三度
  目にしたのは
  もしかしたら
  ジョウビタキにとって
  この木が
  お気に入りの木の
  一本だったのではないだろうか              

     *

  わたしたちと
  ちがい

  飛ぶものたちは
  道を残さない

  春になり



  ジョウビタキが
  北方の地にかえってしまえば
  ジョウビタキの
  日々の
  通り道もなくなって
  それがあったことさえ
  わからなくなる

  空のできごととして
  何ひとつ
  あとが
  残らない

  そのような失い方に
  わたしたちは
  なれていない

  木のように
  もしも
  わたしたちが
  空と近しいものであったならば
  あるいは
  そのような失い方にも
  なれるということがあっただろうか            
                      (久野雅幸)


〔トップページの写真について〕
 上の写真。向かって左は、「センリョウ(千両)」、向かって右は、「キミノセンリョウ」です。
 11月の下旬に、京都に行く機会があったのですが、その折に、東福寺の境内から入った、「臥雲山 即宗院(がうんさん そくしゅういん)」という寺院の近辺で撮影したものです(撮影日:2015年11月21日)。
正月の縁起物として知られるセンリョウが、あたかも自生しているかのように(自生ではないのではないかと思いますが)、生えて実をつけているようすが、印象に残りました。黄色い実をつけるセンリョウ(キミノセンリョウ)は、初めて見ました。
 即宗院の境内には、次の写真のように、「マンリョウ(万両)」もありました。葉の上に実をつけるのがセンリョウで、葉の下にたくさん実をつけるがマンリョウ、のようです(ちなみに、「カラタチバナ」を「ヒャクリョウ(百両)」と言い、「ヤブコウジ」を「ジュウリョウ(十両)」と言うようです。どれも、正月をはさむ寒い時期に赤い実をつける植物ですね)。


 ところで、センリョウもマンリョウも(ヒャクリョウ、ジュウリョウもそうですが)、常緑広葉の木です。
今回、11月下旬の京都に行って、強く感じたのが、「常緑広葉の木の豊かさ」です。
「常緑広葉の木の豊かさ」ということばには、「常緑広葉の木がたくさん生えている」ということと、「常緑広葉の木が豊かさを感じさせる」ということと、二つの意味をこめています。
 サザンカ(山茶花)の花は、花で冬の季語となる、数少ない花の一つですが、東福寺の境内や周囲に“豊かに”花を咲かせていました。次に写真を載せます。

    

 山形県でも、生け垣などに、サザンカの花が咲いているのを見ることができますが、山形では“寒いのによく頑張って咲いているなあ”と、けなげさを感じるのに対して、京都のサザンカは、“ゆうゆうと、自然と咲いている”と感じさせるものでした。花自体が、山形で見るものより大ぶりに思われたのは、種類が違うのか、気候のせいなのか、単なる気のせいなのか……。とにかく、サザンカも、常緑広葉の木です。
 同じく「冬の林」と言っても、「裸木(はだかぎ)と針葉樹」ばかりの北国のそれと、西日本のそれとでは、言葉の「内容」が違うのではないか、などと考えた次第です。