旧トップページ・2014年6月〈2014年6月1日~6月29日〉




「西蔵王高原」の遅い春



高原で見る山肌には、花と緑とまだ芽吹かない木々とが、混在していました。


    
 
 

     ミズバショウが咲いていました。              クロモジの花。かたちもいろどりも、かれんです。



  

        西蔵王高原と言えば、オオヤマザクラ。             高いところのものは、満開でした。





このいろどりに、心がひかれます。



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 高く伸ばした茎の上に



 高く伸ばした茎の上に
 花をかかげて咲いている

 つめくさの花も
 たんぽぽの花も

 この季節―
 花々は
 常にはない高さを得て咲いている

 風の中に
 訪れるものを迎えるために

 ―花たちにとっては
  本当に
  風の中に天使たちがいるのね

 私は
 私たちの大きさが
 花たちのひたむきな高さに比して            
 あまりにも大きすぎると
 考えていた





 
 ごらん
 私たちが
 私たちの大きさに合わせてつくった
 街の
 何とあまりにも大きく
 ぶしつけなこと

 たとえば―
 私たちの足もとの高さに営まれている
 花たちと虫たちとの世界
 ―ここにさえ
  何一つ加える必要のない自然の充足があるというのに  

 花たちと
 同じ高さに蝶々が飛ぶ
 高く飛んで
 鳥が枝をさして降りる
 それぞれが
 それぞれの高さにおいて
 向かい合うべき自然の地平を持っているのに
 人よ
 立ち上がって得た






 私たちの視座の高さが
 常に私たちに進歩を強いる

 その時
 私は
 その人の小さな肩を
 まるでそれだけが私にとっての
 向かい合うべきただ一本の地平線である
 かのように
 見つめていた

 私たちは
 私たちの意志の行方を見定めることができずに―     

 この間まで風の中に訪れを待っていた花が
 今はただ吹いてくる風を待っている―
 足もとに咲く
 そんな
 綿帽子の花のように
 私たち
 吹いてくる
 風を待っていた
            (久野雅幸、詩集『旋回』所収)
 
  
  

〔上の写真の説明〕
 5月6日、西蔵王高原に行きました。
 西蔵王高原は、標高約600m。山形市営西蔵王放牧場として、5~10月は、牛の放牧が行われています。
 オオヤマザクラの自生地として知られ、開花の時期にあたる4月末~5月初旬は、おおぜいの人が訪れます。
 今年は開花が早く、5月6日には、低い場所のサクラは花がかなり散っていました。高い場所のサクラが、見ごろの最後の時期にあたっていました。




〔ミニ・フォト絵本『スズランスイセン』について〕
 写真は、スズランスイセンの花です。スズランに似ていますが、スズランとは別の花です。庭の片隅に咲いていました。
 緑色のいろどりが、花びらの先に、一つ一つあしらえられていて、どうしてこういう細かないろどりが必要なのか(大きくてはいけないのか)、不思議に思われます。
  そんな花の魅力に導かれて、ミニ・フォト絵本『スズランスイセン』を作りました。
  お読みいただければ、幸いです。